黒い肌、大きな瞳、藤城清治の人魚姫
黒い肌、大きな瞳、藤城清治の人魚姫
黒い肌、大きな瞳、藤城清治の人魚姫
アーシュラ・K・ル=グィンの「Earthsea」を読んでいると、物語の情景が私の頭の中にイメージとして広がってくるのだが、そこに出てくる登場人物は宮崎アニメのキャラのような容姿と動きだった。最初はそれをしっくりくるな〜、とか思って楽しんでいたが、だんだんズレが生じてきた。ル=グィンが鋭く指摘したようにアースシーの多くの人々、中枢を担う人間はほとんどが黒い肌、黒い髪、黒い瞳を持った民族である。そして白い肌、金髪、透明な青い瞳を持った民族は辺境の途上国に細々と暮らしているだけ。主役は黒い肌の人々なのである。

そこでなんとなく思い出したのが藤城清治。彼の描く人物は黒い人ばかり。そして彼の光と影の世界はル=グィンの「Earthsea」の世界をイメージ化するには、とてもマッチしているような気がしてきた。偶然、新潟県立万代美術館では藤城清治の展覧会をやっていたので、今日、行ってみた。

私は幼いころ、暮しの手帖で育ったし、朝日新聞の日曜版で連載していた藤城清治の影絵をスクラップして集めているような小学生だった。彼の影絵にはとても惹かれていた。しばらく彼の作品には出会ってなかったが、やっぱり一番印象的なのは黒い肌と黒い大きな瞳。その影絵は今読んでいる「Earthsea」の世界と異様なほど符合するような気がして、内心ドキドキ、驚きをもって眺めた。

特にフライヤーやチケットに印刷された「夕陽の中の愛の奇跡」という作品は思索的である。人魚姫が猫を抱いてキスしようとしているのだろうか。その人魚姫は黒い瞳と褐色の肌をしている。人魚姫ってもともとが北欧の話だから白い肌でもいいのに……。藤城清治はなぜ白い肌の人物を描かないのだろうか。いや、今回の展覧会でも太田光との合作の絵本「マボロシの鳥」の中で数人、白い肌の人物が描かれていた。でも99%以上が黒い肌の人ばかり。ル=グィンは意図を持って黒い肌と白い肌を登場させていたが、さて藤城清治はなぜ黒い肌の人ばかり描くのだろうか。

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