寮の読書室には先輩寮生が置いていった雑誌類も積み上がっていて、その中に早川書房の「SFマガジン」と徳間書店の「SFアドベンチャー」があった。中学のころから筒井康隆で始まってSFは大好きだったが、文庫本ばかりで読んでいて雑誌は読んだことがなかった。そこで、寮では10年分くらいの「SFマガジン」と「SFアドベンチャー」を丹念に読んだ。

当時はちょうどサイバーパンクの出始めのころ。文庫本で読んでいると流行りなどとは無縁で、私はだいたい10年から20年前の作品を読んで、それを新しいものとなんとなく感じていた。しかしリアルタイムのSF界はもうちっと進んでいた。

たとえば、アイザック・アジモフ、アーサー・C・クラークの小説のように、人類や文明の成長と未来を描いたものを読み刺激を受け、いろいろ思いを馳せたりしていたものだが、サイバーパンクが表現する未来は「成長」ではなかった。未来は「拡大」と「混乱」。エントロピーが増大していく社会と現実が描かれており、これはまるで21世紀の予言の書である。ウイリアム・ギブソン「ニューロマンサー」とブルース・スターリング「スキズマトリックス」はバイブル的存在。

話しがそれたが、「SFマガジン」と「SFアドベンチャー」の膨大なバックナンバーを読む機会を得たのは、とてもよいことだった。どっちでどんな記事を読んだか定かでないが、確か「SFマガジン」のほうでヒューゴー賞ネビュラ賞の特集が年に1回あって、そこでダニエル・キイス、アーシュラ・K・ルグィン、オースン・スコット・カード、グレッグ・ベア、コニー・ウィリスなどを知って、少しずつ読んでいった。

「SFアドベンチャー」のほうでは主に国内の作家の作品を読んだと思う。すぐに思い出すのは平井和正の「真幻魔大戦」。「幻魔大戦」シリーズはあまりにも遠大なので、敬遠していたが、「真」や「新」は雑誌で読んで、お、けっこうおもろいじゃん、と思った記憶がある。あとは、かんべむさしや横田順彌の連載とか気に入っていたような。

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